2013年夏合宿

日程

2013年8月10日(土)~2013年8月17日(土)  

山域

剱岳

メンバー

L中野、谷輪、谷口、望永(記録)

行程

■2013年8月9日(金)  (記録:望永)
何とか仕事を切り上げ、毎日アルペン号が出発する竹橋に到着。バスを待つ人で大賑わいだ。代表に出発の連絡をする。
ここ数日の仕事のバタバタから解放されてほっとするのと同時に、これから始まる8日間に緊張とワクワクでなかなか寝付けない。
天気はしばらく猛暑日が続くと言っている。会に入って3年目の夏。さあ!熱い夏の始まり!!

■2013年8月10日(土)曇り (記録:望永)
8:20室堂―10:50剱御前―11:30剱沢―12:45源次郎尾根取り付き―13:00長次郎谷出合―14:40熊の岩

気が付くと室堂に到着。少しは眠れたようだ。中野さんと合流。ザックを計量するとなんと25キロ!今日の目的地、熊の岩にいざ出発。うっすら曇り空がありがたい。
途中、源次郎尾根の取りつきを偵察する。赤テープとしっかりした踏み跡が目印だ。
そして、本日の核心、長次郎谷に入る。長次郎谷は、最初は緩やかな登りだが、熊の岩が見えるころからキツイ登りになる。
途中、大きな雪の塊が右岸から落ちてきて急いでよける。無事、熊の岩到着。Ⅵ峰がはっきり見える。テントは10張ほど。曇りで涼しい初日に感謝。

■2013年8月11日(日)晴れ Cフェース剣稜会ルート (記録:望永)
5:00熊の岩―5:30登攀開始―8:30Cフェース終了点―10:00五六のコル―10:15熊の岩BC―11:15熊の岩BC出発―12:40池ノ谷乗越―14:00三ノ窓

熊の岩BCということもあり一番初めに取り付くことができた。運よく後続もいない。雪は去年より少なく、取り付き周辺の雪もない。
望永トップで緊張しながら1ピッチ目スラブから取り付く。緊張のあまり、2m置きにランニングをとり、凹角に入る前に、残置スリングがかかっているところでピッチを切ってしまう。
「ここは、混んでいるときに待つためのビレイポイントだ」と教わり、トポ図にある1ピッチ目の終了点のテラスに10mほど伸ばしピッチを切る。
2ピッチ目フェースを登る。ハーケンを探し登るが、どこを登ってよいか、どこでピッチを切ってよいか自信がない。ビレイの支点もちょっと怪しい。
「最初はそんなもんだ!」という励ましに背中を押されリッジに出る。岩はしっかりしていてホールドもスタンスもしっかりきまる。
4ピッチ目のナイフリッジに出る。あまりの高さに足がすくむ。高度感にたじろぎ、のどもカラカラ、緊張が高まる。思わずナイフリッジを跨いで座りランニングをとる。
リッジのトラバース。一歩踏み出すのに勇気が出ない。岩をもって、スメアで進む。何とか切り抜けほっと一安心。最後のピッチを登りCフェースの頭にでる。
休憩後、下降開始、Aフェースの頭を目標に進む。ブッシュにしっかり巻き付いた残置スリングを無事見つけ、1ピッチ(50m)で5・6のコルへ懸垂する。
5・6のコルは雪もなく、Aフェースの取り付きまで難なく戻ることができた。

無事BCに戻り、今日の目的地三ノ窓へ引っ越し。熊の岩から右俣をすすみ池ノ谷乗越へ。
急斜面に緊張するが雪渓はアイゼンがしっかり効いた。途中クレバスもなくスムーズに進めた。
池ノ谷ガリーを下る。八つ峰やチンネから下降してくる人の落石が時々あったり、ガラガラ崩れる不安定な足場に、かなり緊張して進む。

三ノ窓に到着。私たちのほかに4パーティがいた。チンネ左稜線がはっきり見える。
テントを張って、雪渓の下にポタポタ落ちる水をためる鍋をセットし、取り付きを偵察に行く。取り付きと雪渓の間に穴があり、ジャンプしなければならなそうだ。
テントに戻ると雷鳥の家族がお出迎え。3羽のかわいいヒナに癒される。三ノ窓に同じくテントを張った他のパーティと明日の行程を情報交換する。

■2013年8月12日(月)晴れ 剱尾根上半部 (記録:中野)
4:30三ノ窓BC―5:30支流―6:00 R2―7:30コルB―12:30剱尾根の頭―12:45 長次郎の頭―14:45三の窓BC

前日、三ノ窓で隣にテントを張ったブナの会2名+富山労山の女性1名のパーティも剣尾根の下半から登るとのことなので、池ノ谷ガリーの落石を警戒し同じ時間に出発する。
朝、5時前出発。上部の急峻なガラ場を落石に神経を使いながら下降する。一か所枯滝のところでルートに迷うがどうにか通過することができた。傾斜が落ち雪渓にかかるところが池ノ谷尾根末端の二俣で、ここを少し入るとR2の入り口である。

二俣からR2の入り口を観察すると、雪渓が途中で切れて二分されており、R2の入り口も雪渓が切れている。雪渓の状態によっては取り付けない可能性もあるが取り敢えず行ってみることにする。下部の雪渓には乗らず、横を通過する。上部の雪渓はアイゼンをつけて登高しR2手前の雪渓が切れたところからクライミングシューズに履き替え、登攀具をつけ岩場を乗越しR2にはいる。
R2は沢状になっていて順調に高度を稼ぐ。途中、チムニー状の急な岩場ができて再びロープをつける。久しぶりの内面登攀に少し手間取るが何とか通過できた。後ろを振り返ると下部に向かったブナ会パーティがR2詰めている。
下部を断念し上部からに転進したようだ。さらに詰めていくとコルBが目前に迫る。あと一息のところが非常にわるく岩がボロボロで不安定な石が積み重なっている。後ろには望永とブナ会パーティが登ってるので落石を落とすわけにはいかない。神経をすり減らしコルBに乗った。ノーザイルでは危険なので、望永にロープを投げて渡す。望永も苦労しながら大きな落石を落とすことなく上がってきた。
ここからは、快適なクライミングのはずだったが実際にはそうもいかなかった。岩場は意外に脆く、ルートファインディングにも苦労する。3ピッチで核心部を抜けコンテに切り替えてスピードアップを図る。剣尾根の頭を稜通しに行こうとしたが、ピークからの下降が悪く一旦戻って這い松をクライムダウンしバンド状をトラバースする。一歩が悪く後続の望永のことを考えるとランニングを取りたいところだが、支点を取る場所が見いだせず慎重に通過する。コルの手前のピナクルで確保し望永を迎える。この先は問題なさそうなので、そのまま望永に出てもらい長次郎の頭に抜けて登攀終了。
簡単で快適なクライミングをイメージしていたが、実際には脆い岩場が多く苦労させられた。
望永にとっては良い経験になったことだろう。

■2013年8月13日(火)晴れ チンネ左稜線 (記録:望永)
4:50三ノ窓BC―5:15取り付き―9:45ハング―13:00チンネの頭―15:00三ノ窓BC―15:45 三ノ窓―北方稜線―19:00長次郎のコル(ビバーク)

3:30起床。昨夜はペルテウス流星群のおかげで流れ星を2つ見た。無事に登れますように。天気は晴れ。いよいよチンネ左稜線の始まり!
雪渓から取り付きにジャンプして、一番に到着。あとから来たガイドが、登山靴のまま猛スピードで登っていった。
中野さんがトップで取り付く。凹角からテラスへ。私たちのあと横浜の山岳会の2パーティが続く。ロープの流れを考えて3ピッチでフェースルンゼを抜けて大きなピナクルの隙間でピッチを切る。トポ図ではⅢ~Ⅳ級だが、高度感とチンネのこれから登る壁を前に圧倒される。
岩はしっかりしていてホールドも豊富。フェース、リッジと続く。ランニングは残置のハーケンやピナクルでとれ、カムやナッツは使わなかった。ハイマツの平らなリッジに出て1ピッチだけトップ交代。八つ峰やクレオパトラニードルをみながら進む。核心の直前もトップ交代。暑さで顔や手が痛い。高度感と、ハングの乗越しに緊張が高まる。核心を越えていくガイドパーティーが見える。あんなところまで登るのかとさらに緊張。
核心は、フェースからリッジをすすみ、すこし左に移りハングをのっこす。そこからフェース・リッジになる。フォローのためにたくさんランニングを取ってくださる。中野さんは、ハングをフリーで超えていく。ビレイする手に汗がびっしょり。横浜のパーティーもガンバ!と声援を送ってくれた。勇気と技術に感服。
とうとう私の番。去年の失敗のいくつかが頭をよぎる。ハングは、ジムでも日和田山でも三つ峠亀ルートでも練習した。アブミも練習した。「落ち着いて、落ち着いて、大丈夫、大丈夫」と言い聞かせて取り付く。ハング手前のリッジを直上する体が外に飛び出す。三ノ窓雪渓がかなり下に見える。緊張で押しつぶされそうになる。いよいよハング。とてもフリーでいける気がしなかったので、ヌンチャクをかけて慎重にA0してハング下へ。らんたんで「おもいっきり体を近づけて右手をのばすと快適なホールドがある」という記録を思い出し、上に手を伸ばす。「おお!!これか!!」とがっちりしたホールドをつかんでエイッと乗り越す。よかった、と一瞬ほっとするも、興奮は冷めず生きた心地がまったくしない。
この後も中野さんトップで進む。途中交代といわれたが、とてもできる気がしないので中野さんにお願いする。最後のナイフエッジのリッジは交代する。50mギリギリでチンネの頭に到着。心からほっとした。到着もそこそこに、すぐ、チンネの頭と三ノ窓の頭のコルへ降りる。ここでがっちり握手をして水分補給。
下降の準備。懸垂支点は残置スリングがしっかりかかっていて明瞭。池の谷ガリーへ2ピッチの懸垂だが、ガレていて非常に悪い。ロープを投げたら、落石間違いなしなので肩掛け懸垂をする。石を落さないように慎重に降りる。池の谷までは届かないので途中の残置支点のところでピッチを切る。もう一度セットをするも、緊張と疲れでもたついてしまう。何とかセットし、再び肩掛け懸垂で下降。岩に引っかかったロープを直すと、砂利やこぶし大の落石。ヘルメットにバラバラと小石が当たって、非常に怖かった。何とか池の谷に降りる。後続のパーティに合図をして、急いで池の谷ガリーを下降する。

三ノ窓について、チンネ左稜線を見ると登ったルートがはっきりわかる。感激の瞬間だった。
翌日のことを考え、「今日中に剣沢まで降りるのは無理でも、いけるところまで行ってビバークしよう」ということになり急いでパッキングする。水は今日の行動分、食事、明日の行動分で2人で4Lザックに詰めた。
ここから北方稜線を本峰に向かって移動開始。池ノ谷ガリーはかなり足場も不安定。熊の岩に下山することも考えたが、この大荷物と疲れでは、熊の岩までの急斜面の雪渓を下るのは危険と判断。本峰経由で下山することにする。
池の谷乗越からの階段状の岩壁を登るが、おなかから声を出さないと体が持ち上がらない。疲労と荷物の重さに身も心も疲れ果てて言葉もでない。途中の非常に快適であろうビバークポイントを通り過ぎ、長次郎の頭のそばまでくる。時間はまもなく18時。昨日通った雪渓までどのぐらいかかるかわからなかった。中野さんに「さっきのビバークポイントまで戻ろう」といわれるも、首を縦に振ることができず黙りこむ。「戻りたくないです。」と思わず主張してしまった。リーダーの決定に口答えするなんてと思いながらも、いっぱいいっぱいになっていたと思う。中野さんは理解してくださり先に進むことになった。
何とか昨日通った雪渓をみつけ、長次郎の頭に到着。長次郎の頭には剱尾根を登ってきた2~3パーティが急いで下山するところだった。長次郎のコルを偵察にいくと、クライムダウンが必要なガレ場になってる。この大荷物でクライムダウンは自信がない。懸垂の残置支点があるので、25mの懸垂をする。コルへと続くガレ場を少し下り19時コルに到着した。先ほどの剱尾根からのパーティもビバークの準備をしている。平らな場所はもうないが、何とかテントを張れそうなところにテントを張って、食事をしてシュラフにもぐりこむ。これ以上歩かなくてもよいことに心からほっとして横になった。

■2013年8月14日(水)晴れ 長次郎のコル―剱沢 (記録:望永)
5:00長次郎のコル―5:30本峰山頂―8:30剣山荘―9:30剱沢BC

ビバークした長次郎のコルは、何とかテントを張れたものの、3分の1は空中に浮いている状態。熟睡とは言えないが体は休めることができた。テントを撤収し、ビバーク仲間に挨拶して出発。
コルから見上げる本峰への道は、ものすごく悪そうに見えたが、登ってみるとちゃんと道になっている。長次郎さんたちは、ここから登ったんだなあと映画を思い出しながら登る。
本峰到着。朝3:30に剣山荘を出発した青年と我々だけの静かな山頂だった。祠は雷に打たれてなくなっていた。北方稜線も八つ峰も源次郎も、遠くに薬師や槍すべて見渡せるとてもきれいで静かな朝だった。
剣山荘に到着。やっと地に足がついた気持だった。代表に連絡をいれる。剱御前にアンテナが付いたおかげで剣山荘、剱沢は携帯電話がつかえる。剣山荘で中野さんは下山へ。
剣沢キャンプ場にテントを設営。洗濯や、頭を洗って、これでもかというぐらい水を使って過ごす。気持ち良い青空と気温でみるみる乾いていく。
昼頃、谷輪さん到着!リクエストに応え、お刺身、ステーキ、レタス、キュウリ、トマト、プラム、グレープフルーツ、梨など大量の食材をもってきてくれた!!想定するにザック30㎏!
久々のフリーズドライでない食事に感激!おなか一杯になって就寝。

■2013年8月15日(木)晴れ→雨→晴れ 源次郎尾根 (記録:望永)
4:30剱沢BC―5:45源次郎尾根取り付き―10:00 2峰―12:25本峰山頂―16:00剱沢BC

3:00起床。今日も晴れている。出発前に谷輪さんのアイゼンが靴に合わないことが判明。谷輪さん源次郎の取り付きまで念のためピッケルを持って、アイゼンなしで下る。
若干ガスっているのが気になったが、取り付くころには青空も見えた。5:30取り付き。先行するのは2~3パ―ティ見える。
尾根ルートに取り付く。踏み跡は明瞭。木の根や幹をつかんで登り始める。しばらくいくと前のパーティーがロープを出している。短いが、よくはなさそう。ロープを出して木の幹でビレイする。
そこから先は、ブッシュや木の幹を頼りに進む。久しぶりに緑に囲まれてただただ楽しく登った。谷輪さんもしっかりした足取りですすむ。後ろからきたソロの人2人と外国人のパーティに先を越される。
ひたすら急登で1峰にでる。休憩してクライムダウン。難しいこともなく1峰と2峰のコルにでて登りかえす。2峰の山頂で、後続のパーティに写真を撮っていただく。八つ峰がはっきり見渡せる。
2峰奥の突端から懸垂。支点はガッチリした太い鎖に、きれいな安全環カラビナがついている。
懸垂のセットをしてロープを投げる。30mほどあるので50mダブルロープを2本持っていき1回でコルまでおりる。途中ロープがからまりもたつく。きれいに投げられるようになりたい。
コルからはひたすら本峰を目指す。階段状の岩を登る。ロープを出すようなところはないが、途中脆い岩もあるので落さないように。ブッシュもたくさんあって高度をどんどん上げていく。
谷輪さんも久しぶりのバリエーションルートで楽しそうである。太陽が照り付け今日も暑い。
取り付いて6時間半ほどで山頂に到着。ガッチリ握手をして下山開始。
少しガスが出てきて雲行きが怪しい。前剱付近で雨が降り出す。カッパをきてさらに下山。ほどなくして雨は止んだ。剣山荘でゆっくり休んでBCに戻る。

■2013年8月16日(金)晴れ 剱沢BC停滞(記録:望永)
本日は停滞に変更。天気も快晴で、最高の休息日だ。
朝もゆっくり過ごし、洗濯をしたり、シュラフを干したり、明日の行程についてゆっくり考えて過ごす。
15:30谷口さんと合流。真っ黒に日焼けした谷口さんに最初は気が付かなかった。無事合流できたことを喜び、夕食は素麺をいただく。
谷口さんは、これまでの縦走の疲れもあり、明日本峰を踏んで一緒に下山することになった。明日はいよいよ最終日。

■2013年8月17日(土)晴れ 本峰往復 (記録:望永)
3:25剱沢BC―5:00前剱―6:20本峰山頂―9:00剱沢BC―10:00剣沢BC-12:45室堂―13:30富山直通バス―16:00富山駅―観音湯―17:30富山駅―10:30帰宅

本日下山することを考え、ヘッドランプをつけて歩き出す。谷輪さんはテントキーパーで体力温存。
谷口さんとは初めての山行だが、さすが最年少!昨日までの縦走の疲れも何のその!元気にあるく。
鎖場も楽しそうに写真を撮りながら順調に進む。カニの縦バイも楽しそう!本峰到着!
縦走してきた峰々が見渡せとても満足そう!
山頂には10人ぐらいの人が、景色を堪能している。下山も鎖・梯子もどんどん進み、予定より10分遅れで無事に劔沢に下山。

谷輪さんが剣沢の小屋まで迎えに来てくれた。冷やしたグレープフルーツで元気回復。パッキングをして出発。
バスの出発まで3時間。時間がきになり剱御膳まで一気に登る。これで剱も見納め。記念撮影をして雷鳥沢へ下る。
8日間の疲れか、何回か足を滑らせる。バスターミナルまで最後を登り、無事合宿を終えた!!お疲れ様でした!!!

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