谷川岳東尾根

日程

2014年3月21日(金)~3月22日(土)

山域

谷川岳 東尾根

メンバー

L中野、増田、望永(記録)

行程

3月20日(木)
中野さんと越後湯沢駅で合流。天気予報通り小雨がぱらつく。関越トンネルを抜けて水上インターで降りる。水上駅付近はまだ雨だったが、土合駅あたりで雪にかわる。
ロープウェー駐車場に到着。仮眠する。
3月21日(金)
6:00起床。駐車場付近は地吹雪で、ロープウェーも強風のため運転見合わせのアナウンス。駐車している車もいつになく少ない。
明日から天気回復の予報もあったため7:30出発する。
登山指導センターで計画書を提出する。間もなく膝上までの積雪のためワカンをつける。
一ノ倉沢出合までの林道は、雪がかなりつもり終始ラッセル。先頭を交代しながら進む。
林道の途中途中に、デブリの跡が見られ、大きな雪の塊が林道に転がっている。風もところどころ強く吹いている。他に入っているパーティーはなかった。
9:30マチガ沢出合、10:30一ノ倉沢出合に到着する。
避難小屋には、カモシカや、クライマーの写真を撮るカメラマンの方が入っていて、お茶をごちそうになる。先週は天気が良く、20組のパーティーが入っていたとのこと。
中野さんは一ノ倉沢を偵察に行った。一ノ倉沢出合から少し進んだところはデブリだらけで、一ノ倉尾根の雪庇もかなり大きく張り出している。

雪はしまっているが風も強く、一の沢左稜も検討したが本日はこれ以上進むのは難しいと判断。避難小屋で停滞を決める。
避難小屋はコンクリートで頑丈だが、外の風の音は激しかった。雪も吹き溜まりもあり正確な積雪量はわからないがかなり積もっていた。夜は増田さん特製チャーシュー入りラーメンを食べて、明日の天候回復を祈りながら18:00就寝。
3月22日(土)
2:30起床
風はまだ強く、雪も降っている。とりあえず行けることころまで行こうということで、支度をして4:50避難小屋出発。
避難小屋から、一ノ倉沢出合までで既に膝上までのラッセル。一向に進まないためワカンをつけて、先頭を交代しながらラッセルで進む。デブリの上の固い雪の上を通ったかと思えば、雪がたまって深みにはまったりと、前進するのに時間がかかる。

一の沢を途中まで詰めるが、ここでもデブリになかなか進まない。
6:30一の沢の途中までくるが、ここまでに相当な時間がかかっていること、天気の回復もなく、風も強く雪もさらに降っていること、稜線に抜けたとしてもさらに時間がかかることが予想されるため、敗退を決断。下山することとする。
6:40一の沢と一ノ倉沢の分岐に到着。ガスも濃く、衝立岩もうっすら見える程度。
6:45一ノ倉沢を下降。3人はデブリの雪の塊を避けるように歩いていたので、それぞれ少し離れた場所を歩いていた。後ろで雪崩の音がする。中野さんと「雪崩れましたね。急がないと・・・」と話していると、雪煙が広がる。
「こっちに来るぞ!逃げろ!」と中野さん。後ろを振り向くと雪煙が近づいてくる。中野さんはザックを捨て少し高いところに上がる。「早く逃げろ!!」とコール。
そうこうしているうちに、雪に足をとられ腰まではまってしまい、身動きが取れない。何とかでなくくちゃ!とモガクも動けない、雪煙が近づいてくる。
「これは本当に危ないかもしれない・・・」と思ったときに雪煙が止まった。すこし後ろにいた増田さんも雪煙を振り切って無事。「助かった・・・」何とか雪から抜け出し、安全なところまで逃げる。
中野さんによると、デブリはあと10mのところまで来ていたとのこと。
一の倉沢出合についたのが7:00。15分間の出来事だった。
一ノ倉沢出合を7:30に出発。昨日つけた林道のトレースは雪に埋もれ、またしても終始ラッセル。雪崩れそうな場所(すでに雪崩のあとがある場所)は、中野さんが空身でラッセルし間隔を開けて通過した。
徐々に天気は回復。8:50にマチガ沢出合についたときには青空も見えた。
西黒尾根を登ろうかという話もでたが、このラッセルではとても時間がかかること、さっきの雪崩のこともあり、気持ちがついていかず下山した。
帰りに立ち寄った温泉で、水上町の人に尋ねたところ、街中でも積雪30㎝だったとのこと。
雪崩前 6:43

雪崩後 7:05

当日の天気

木曜日 金曜日 土曜日

谷川岳の冬季登攀について 廣川氏(チャレンジアルパインクライミングより))

1 20㎝以上の新雪が降った後の晴天時、
2 天候を問わず、30㎝~40㎝以上の新雪の後、
3 雨の後、気温が上がった時の入山は避けた方がよい

感想

谷川岳東尾根は昨年3月も計画しており、いつかは登りたい憧れのルートであった。
昨年は、天候だったか、日程だったか、谷川に行くことなく中止になった。今回も天候の悪さはあったが、現場にいくことができた。結果は敗退だったが、実際に現場に行ったからこそ学ぶことができたと思う。
今回、正確な積雪量はわからないが、一ノ倉沢出合のふとももラッセル、一の沢のラッセルからして、50㎝以上の積雪があったと思われる。
あと5分下山が遅れていたら、あのデブリに巻き込まれていただろう。あの規模では、プローブもスコップも歯が立たないと思う。このような経験はしたくはないが、「降雪直後は雪崩が起きる」と何度も書かれていることを、実際に体験できたことは貴重な経験になった。そして、いつも先輩から「早くしろ!」と言われる理由もよく理解できたように思う。モタモタしていたら自分だけでなく、パーティー全員が危険にさらされる。素早い行動が事故を防ぐことにつながると思った。
東尾根は、谷川岳の入門ルートと言われ、1日で抜けている記録も多くある。確かに技術や体力もある人たちだからできることだと思うが、あくまでも天気が味方しているからこそだと思う。
山は、こちらの思うとおりに登らせてくれない。せっかく行ったのだからと無理やり登ろうとしても、はっきりと断られてしまう。本当に登ろうとしたら、行って、断られて、がっかりしながら戻ってきて、また出かけていって、山がほんの一瞬だけ、登ってもいいよ!と言ってくれたときだけ登ることができるのだと思う。
敗退の決断は難しい。「本当は行けるのに弱気になっているのではないか」という考えがいつもよぎる。普段から体力をつけ、練習を繰り返し、「ちゃんと登れる」準備をしなければいけないのは勿論だが、弱気ではなくしっかり判断すること、なかなか思うように登れなくても「またおいで」と山に言われたと思って、素直に引き返すことが次につながるのだと信じたい。
リーダーの中野さん、増田さん、お二人のおかげで3月の一ノ倉に行けました。心からお礼を言いたいです。そして、ヒヤヒヤさせてごめんなさい。来年またチャレンジできるようにこれからもどうぞよろしくお願いします。

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