個人山行 滝谷 第4尾根

日程

2021年9月11日~13日

メンバー

L中野、大塚(記録)、他1(Y)

 

行程:

9/11(土):5:00 鍋平駐車場 – 5:30新穂高 – 8:40滝谷避難小屋9:20 – 9:45雄滝13:10 –
15:15滑滝17:30 – 19:00BP

9/12(日):6:00行動開始 – 7:50小コル8:30 – 9:15スノーコル – 14:15ツルムの頭 – 16:30登攀終了
– 16:50登山道 – 18:20穂高岳山荘

9/13(月):5:40穂高岳山荘 – 6:05奥穂高岳 – 7:10ジャンダルム – 8:30天狗のコル10:40西穂高岳 –
12:40西穂山荘 – 13:30新穂高ロープウェー (11:00 岳沢小屋 – 14:00 上高地)

 

夏合宿が中止になり、雨の隙間で登った鶏冠谷の帰路で中野さんから滝谷の誘いがあった。
いつか行ってみたかった滝谷、しかも出合いから登るというので、この機会を逃してはいけないと思い、参加を決めた。
結果として天気はいまいちだったが非常に充実した山行となった。

 

7/11(土)

前夜19時半に武蔵小杉で集合して新穂高に向かい、中尾橋の駐車場で仮眠した。
車中で駐車場満車ってことは無いですよね、と冗談では話していたが朝4時過ぎに向かうと満車だった。
仕方なしに鍋平駐車場に向かう。

新穂高までの30分が追加された。予定出発時刻より遅れが生じる。天気予報では晴だったが、雨が降っている。
朝食をとり雨具を身に着ける。出発の遅れ、降雨、更にもうひとつ問題が起きていた。
ガスカートリッジを紛失して(途中のPAで荷物を落とした際と思われる)使いかけの1つしかなかった。

蒲田川右俣林道を歩く。チビ谷で雨があがったので雨具を脱ぐが、すぐにまた雨となった。
滝谷避難小屋で再度雨具を着込み、ここから登攀具を身に着ける。
足元は中野さんが沢足袋(フェルト)、大塚が沢用シューズ(ラバー)、Yさんがアプローチシューズ(防水仕様)である。
重量はそれぞれ17~18kg程度(自己申告値)、まあまあ重い。

すぐに雄滝。事前の調査どおり雌滝との中間尾根からの高巻きルートをとる。
大塚がトップで40m弱、最初はナッツとカムで2か所ほど中間支点を取って登った後は残置のハーケンが数か所あり利用した。
2P目は踏み跡明瞭な草付きをトラバースからの右上。1か所クライムダウンがあり、ここだけ緊張する。
クライムダウンの手前はナッツがピタリのクラック。
3P目は草付き直上からの右トラバースだが、支点がとれそうな場所までロープ長が足りないため、
戻って立派な木で2人を迎え入れる。
4P目は右トラバースほぼ普通に歩き。5P目は5m程度で、小さなルンゼを横断して落ち口に到達。
ふう、この巻きで3時間程要した。

少し沢歩きすると前方に雪渓が見える。両壁にアーチ状に架かった短い雪渓で5m程度、1人ずつくぐって通過する。

すぐに8m程度の滝。水は幅広く流れており、濡れるのを避けるために右岸から高巻く。
登れそうなところを探りながら大塚がロープを引く。ビレイヤーの位置から大きくトラバースしたのち、
凹状のところを登り始めると足元の石がひとつ転がり落ちた、
と思ったら一気に足元の石が全部落ちて足場消失。
両壁に突っ張って耐え、落石が落ち着くのを待ってクライムダウンする。場所を変えて3ピッチで高巻きを終える。

滑滝。雨はあがったが、ガスが濃く上部が見えない。水流右を登る。
最初大きな段差を超えた後はスラブとなる。水流広く、ぎりぎりの乾いたスラブをフリクション頼りに登る。
斜度が増した。
落ち口どころか数m先が見えず、ロープ長が足りるのか不安なため、一旦ハーケンとカムで支点を作り
2人にあがってもらう。視界が回復し、少し上に残置のハーケンを2つ発見。
中野さんに残置ハーケンの箇所に移ってもらい、追加ハーケンで補強してもらう。
2P目、大塚再び登りだすが、ぬめったスラブへ足が出ない。しばし悩む。
すると右手の側壁に残置のハーケンが見えた。そのまま垂壁を直上している。
中野さんが下から叫んでいるが反響してあまりよく聞き取れない。
悪い予感もするが、クライムダウンの可能性も考えながら2ピン分登るとトラバースして落ち口へ至るルートが見えた。
墜ちるとそのままスタートへ戻りそうだが、トラバースは比較的安定していた。
そして落ち口定番の手がかりのないヌメリスラブ。慎重に抜ける。

2人が登ってくると既に17時半。目の前には10m程度の滝。1ピッチで登るが、側壁はまだ高いまま。
中野さんがビバーク地を探しに空身で偵察に出るが、良い場所がないとのこと。
いやいや、しかし、こんな危険な場所でビバークはできない。
なんとかF沢の出合いまで進めば谷が広くなるだろうと期待して、ヘッデン遡行を開始する。
シャワークライムあり、まだロープ出す滝あり、もう真っ暗という状態で目の前に白い壁が現れる。
雪渓か、、もはやここまで。暗闇で雪渓超えるならここでビバークかとGPSで確認するとF沢出合いの間近であった。
少し平なところを見つけ、テントを張る。

星は綺麗だが、時々聞こえる落石の音に不安しかない。更に寒くて安眠できない夜だった。

 

7/12(日)

朝起きると目の前の雪渓はとても小さな残骸だった。
F沢の出合い直下といった場所ですぐに水涸れとなった。水を補給して涸れたB沢からC沢へと入る。
涸滝登りが楽しく、それほど悪くもない。
C沢二俣から右俣に入ると第四尾根に登る明瞭な踏み跡を見つけ、すんなり稜上に出た。1人用テントスペース程度だ。

ここからロープを出して登攀を開始する。出だしだけ簡単なクライミング+歩きで2P進むと広く安定した場所にでる。
ここはまあまあ広い。第四尾根はA~Dの4つのカンテがメインで4つめが核心、とガイド本にはある。
昨日の行程に比べれば各ピッチのグレードやロープ長が示されているのでだいぶ気が楽だ。

最初は易しい、、、が脆い。気を遣いながらロープを伸ばす。3P目Aカンテ、どこがカンテなのか不明、
どちらかというと凹角を登っていった。Bカンテは明瞭なカンテでホールドもある。
少し歩きの後にCカンテ、だんだん傾斜が強くなってくる。Cカンテを越えてピナクル脇からツルムの頭へ。
この後下降するため頭まで出る必要はなく、左手に懸垂支点が見えていたが、足場が不安定なため、
一つ上のツルムの頭の懸垂支点を目指す。
Cカンテを登り始めてからビレイ地点がずっと不安定だったため、平地で休みたかった。
ツルムの頭は広く落ち着けた。この時点で14時半。なんとか今日中に山荘まで行けそうだ。

トポには20m下降とあるが、念のためロープ2本で懸垂下降する。降りた先は狭いコル、頭で休んでよかった。
最後の2ピッチ。クライミンググレードとしては核心部となる。最初の核心はチムニー超え。
ハーケン乱打されている。時間が押しているので、残置を使って人工で登る。
最終ピッチはⅤ級となっているが、岩が硬く安心して登れる分だけ精神的に易しい。16時半登攀終了。

少し上に登山道を示す○印のペンキマークがいくつも見える。少し歩いて登山道、風が冷たい。
装備を解除してそれぞれ山荘へ向かう。
暗くなる前にテントの場所確保と、懸念のガスカートリッジ購入を目指して、大塚が先行する。

なんとか暗くなる前に山荘到着のめどが立ち、涸沢岳に立ち寄る。
山頂では若いカップルが陽が落ちるのを待っていた。2人の高いテンションに元気づけられて山荘へ。
ヘリポート脇に場所を確保し、山荘で手続きする。残念ながらガスカートリッジの販売はなかった。

お湯の購入ができることを確認し、ヘリポートに戻る。2人と合流しテントを張る。寒い。
中に入るとどっと疲れが出て動けなくなった。残りガスが少ないため、今日はお湯を購入し、
朝食は行動食と残りのガスで温かい飲み物だけ作ることにした。
申し訳ないと思いながら中野さんにお湯の購入をお願いし、テント内で座ったまま休む。

テントに誰か訪ねてきた。先ほど涸沢岳で会った若者だった。
どうやってテントを特定したのか分からないが、写真を見せにきてくれた。
話の流れでガスがないことを話すと一旦戻って残りガスを譲ってくれるという、
通りすがりのおじさんに何故こんなに親切なのか分からないが、更にその後ビールの差し入れまでもらう。
感謝である。山に登る人は皆聖人であると聞いていたが本当だった。

 

7/13(月)

前夜非常に疲労していて夕食は半分程度しか食べられなかった。
全部着込んでカイロも貼ったが非常に寒く、また風も強く吹いており何度も目が覚めた。
しかし朝起きると元気になっていた。譲ってもらったガスで作ったラーメンで朝食をとって出発準備する。

今日は晴天である。天気予報では3日間天気が良い予報であったが、3日目にしてついに天気予報どおりの晴れとなった。
今日は西穂高までに縦走で下山はロープウェーである。非常に気が楽だった。

奥穂高岳を出た時は同じルートの登山者多く混雑していたが、
いつの間にか人が前後に見えなくなり、快調に歩くことができた。西穂高岳からはまた人が増えたが、
安心登山道に変わり、13時半には新穂高ロープウェー駅に到着した。

 

中野感想:滝谷出合からの第四尾根の登攀は、十数年前からずっと狙っていたが、なかなかチャンスに恵まれず
60歳を前にやっと実現することができた。当初は気力も体力も十分だったが、気がつけば重荷を背負っての
登攀は厳しい身体になっていた。今回、大塚さんにリードしてもらい感謝している。
このルートは、沢登り、雪渓処理、登攀技術、体力の全てを試される素晴らしいルートである。
ぜひ一度は、登ってほしい。
この一週間後の土曜日、岐阜県高山市を震源とする地震が発生し、
涸沢での岩雪崩の様子がニュースで放映された。
もし、一週間日程がずれていたら滝谷の各沢が合流するガレ場で地震に見舞われることになりゾッとする。

 

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