2020夏合宿(1) 黒部川上ノ廊下

日程:

2020年8月7日~9日 

メンバー:

 
中野 中川 山崎

行程:

二十数年ぶりの沢登り合宿を黒部川上ノ廊下で行うことになった。言い出しっぺは私である。二十数年前に遡行した上ノ廊下の絶景をもう一度見たくなり、数年前から提案していてやっと今年取り入れられた。

8月7日 曇 8:00黒四ダム 12:00平ノ渡し 14:30奥黒部ヒュッテ

前日は雨が降っており、水量が心配だ。早朝、扇沢に集合し、7:30発(始発)の黒部ダム行きの電気バスに乗る。昨年からトロリーバスが廃止になり、電気バスに変わった。バスを降りるとトンネル内は寒い。おそらく15℃くらいだろう。下界は35℃越えの猛暑なので、信じられない環境である。トンネルを出ると外は蒸し暑かった。

 ロッジくろよんを過ぎると、林道は登山道に変わり時折、路が崩壊したところに丸太が渡してあったり、はしごが掛かっていたりして大きく高巻いている。このため、足場の悪いアップダウン連続する。上流に向かっているので標高を稼いでいるような気もするが、平ノ渡しで黒部湖を船で横断するので全く標高差がないことがわかる。さらにいくつかの沢を横切る際に大きく迂回するので、かなり遠回りしていることになる。観光用の遊覧船が通過していくのを見ると、6時間掛る道のりを数分で通過していく。ここを通るたびに遊覧船で途中下船できないものかと考えてしまう。

12時の渡し舟に乗り、対岸を奥黒部ヒュッテに向かって進むが、ここも丸太の渡しとはしごの連続だ。歩き飽きた頃、ようやく奥黒部ヒュッテに到着した。もう少し進もうかと偵察にでたが、いきなり泳ぎになりそうなので本日はここまでとする。小屋でテントの受付をしながら、上ノ廊下の情報を入手する。前日は豪雨で、今まで入山したパーティは全員敗退しているとのことである。我々の他に上ノ廊下を狙っているのは3パーティ。
私と山崎氏はタープで、中川氏はツエルトを張って一夜を過ごす。私は虫刺されで一晩中眠れなかった。

平ノ渡し舟にて

黒部湖畔の登山道

8月8日 曇時々小雨

 朝起きるころ雨が降り始め、お互い牽制しあっている。暫く様子を見ていたが、1パーティは東沢に転進し、我々を含め3パーティが上ノ廊下を行けるところまで行くことになった。このうち1パーティは少し早く出発し、残る1パーティは我々とほぼ時を同じく出発した。上ノ廊下への出だしは胸までの渡渉となる。幸い流れがなく難なく渡渉できた。暫く行くと、流れが速い腰までの渡渉となる。中川氏がロープを付けて何とか突破し、ロープを頼りに何とか通過。二十数年前の上ノ廊下より一回り水量が多い。このようなギリギリの渡渉を繰り返しながら前進するとやがて下ノ黒ビンガが見えてくる。

ここは、泳ぎでしか突破できない。朝一緒にでたパーティが先行する。パワーのありそうな若手が空身の泳ぎでチャレンジする。ライフジャケットは水の抵抗を受けるためか着用していない。顔を出しながらクロールで対岸に渡る。ヘルメットを外し本気モードで今度は顔を水面に付けてクロールで全路力で泳ぐ。流れに押し戻されそうになりながらも何とか突破した。後はザックを一つずつロープで引上げ、その後一人ずつロープに引っ張られながら泳いで突破していった。我々もそれに続くように中川氏がトップでチャレンジする。

何とか対岸にたどり着いた。対岸の岩場に上がり、暫く体制を立て直した後、水流に逆らって突破を試みる。あと少し、突破したかと思ったが流れに押し戻され失敗。一旦我々のところまで戻る。本人曰く、「ロープに引っ張られて全く進まなくなった。」「泳力は関係ない。北島康介をここに連れてきてもだめだ。」と沢での泳ぎの難しさを説明した。あきらめかけた時、山崎氏がチャレンジしたいと言ってくれたので、トライしてもらうことにした。対岸に泳ぎ着き、流れに逆らっての突破に入る。ロープがなるべく負荷にならないよう、ロープを流すようにビレーする。必死に泳いでいる。あと少し。ガンバレ!何とか突破することができた。山崎氏と中川氏のザックをロープで引き上げてもらい、中川氏がライフジャケットに空気を入れ泳ぎながらロープで引きお上げてもらう。私はライフジャケットがないのでザックを浮き部代わりにしてザックに掴まりながらロープで引き上げてもらう。途中でザックが反転し溺れそうになったが何とか体制を立て直した。水はとても冷たく、震えが止まらない。下界の酷暑のことなどすっかり飛んでいた。

安心したのもつかの間、すぐに急流の渡渉になる。中川氏がロープを引いてトップでチャレンジするが苦労している。一旦、戻り体制を立て直した後、再度トライ。腰上まで水流が流れていてバランスを崩す。流され一瞬視界から姿が消える。幸い大岩の裏に回り込み岩の上に立つことができた。ここで撤退を決める。しかし、撤退するということは今しがた泳いで渡ったところを戻らなければならない。中川氏は少し興奮状態だったので、私がトップで泳ぐことになった。岩場で一旦ピッチを切り、二人を迎える。流れに沿って泳ぐか対岸に渡るか意見が分かれたが、中川氏がトップで流心を飛び越え対岸に戻った。その後我々も合流し、帰路に立った。きわどい渡渉を繰り返し上ノ廊下を戻っていく。中間くらいまで戻ったところで、渡渉が行き詰まり河原でビバークすることにした。焚火をして冷え切った身体を温めた。

上ノ廊下前半の渡渉(腰まで)

下ノ黒ビンガの泳ぎ(一旦対岸まで泳ぎ、流れに逆らって砂地まで泳ぐ)

8月9日 曇後晴
朝起きると、水嵩も10cmくらい減っており、奥黒部ヒュッテまで戻り下山した。

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