2012年度夏合宿 登攀隊報告

日程

2012年8月11日 , 15日

山域

剱岳

メンバー

L長島、中野、望永(記録)

行程

8月10日(金)
23:30高速バスにて東京駅から富山駅へ。
【1日目】
8月11日(土) 雨のち曇り時々晴れ
6:30富山駅~10:15室堂出発~13:00剱御前~13:40剱沢キャンプ場~15:10長次郎の出合~18:00熊の岩BC
富山にて中野さんと合流し10:00室堂に到着。小雨のなか歩きだす。剱沢からは雨は収まり、曇り空に助けられて汗をかくこともなくアイゼンをつけて剱沢雪渓を下る。 
源次郎尾根への取りつきを確認しながら長次郎の出合へ。八ツ峰を眺めながら気持ちよく登り始める。熊の岩が見えるあたりから傾斜がきつくなり息が上がる。18:00熊の岩に到着。すでに10張以上のテントが張ってあり、雪のないところにはテントを張るスペースがないため雪渓の上にBCを設営する。雲はあったが、八ツ峰Ⅵ峰ははっきりと確認できた。19:00頃から雨が降り出す。

長次郎谷を登る

剱岳八ツ峰Ⅵ峰 A~Dフェース
【2日目】
8月12日(日)曇りのち晴れ 
3:30起床~5:30熊の岩出発~6:00八ツ峰Ⅵ峰Dフェース取りつき、登攀開始~ 10:00~10:30 Dフェースの頭(6ピッチ)~15:00熊の岩
雨は上がり曇り空のなかDフェース取りつきへ。岩と雪渓の間には人が入ってしまいそうなシュルンドがあり慎重に岩に乗り移る。2人しか乗れない小さなテラスにて交代で準備をし、トップ長島さん、望永(ビレイ)、中野さんの順番で登攀開始。天気も取りつくころには晴れてきていた。

Dフェース取りつきへ

八ツ峰Ⅵ峰Dフェース
1ピッチ目(40~45m)、傾斜のきついスラブ状のフェースを登っていく。長島さんは難しさをもろともせず安定して登っていった。細かいホールド・スタンスが続きでかなり緊張する。岩はしっかりしており、ところどころに小さなガバもあった。ここで富山大ルートではなく久留米大ルートに登っていたことに気がつく。3ピッチ目で富山大ルートに戻ることとし、このまま直上した。

1P目フォローで登る中野さんと望永
2ピッチ目(30m)も1ピッチ目同様、スラブ状のフェース。細かいホールドにかなり緊張する。ビレイしてくれている長島さんに声をかけられても、返事ができないほど張り詰めた気持ちで登った。

2P目のフェース ホールドも細かい
3ピッチ目(30m)、5メートルほどスラブを直上しバンドに出る。リッジに向かってトラバースし富山大ルートに入る。ビレイ点直下のフェースは、ハイマツのA0で、思わず笑い出してしまうほど楽しい気持ちで登った。

3P目リッジをリードする長島さん
天候は予想以上に回復し、太陽がジリジリ照りつけ気温も上がる。4ピッチ目5ピッチ目は高度感のあるリッジを登り、6ピッチ目には傾斜も緩む。いよいよDフェースの頭に登頂!!青空の下で握手を交わす!!Dフェースの頭からは剱岳本峰、源次郎尾根、雄山、剱沢のテントもはっきり見渡せ、広がる景色に心から感動した。

Dフェースの頭にて(後ろは源次郎尾根)

Dフェースの頭からの景色

Cフェースを登る人たち
10:30下降のためAフェースへ。八ツ峰縦走路はしっかりした踏み跡がある。懸垂用の残置支点(カラビナ付き)から、中野さんがトップでスラブを50m下降する。

八ツ峰縦走路を下る

スラブを下降する中野さん
2回目の懸垂をしている途中で、5・6のコルの三の窓側に降りていることに気がつく。下降開始地点で長島さんが確保し中野さんが登り返す。下降1ピッチ目も登り返すことにした。しかし下降したスラブはハーケンもなく、トップの中野さんはブッシュでランニングをとりながら登っていく。手がかりも少なくトラバースも緊張した。
そこからAフェースの頭にもどり、1回目ブッシュの支点(残置スリングあり)から25メートルの懸垂、2回目灌木の支点(残置スリングあり)から50m下降し5・6のコルへ降りた。
明瞭な踏み跡や、残置の懸垂支点がいくつもあったことが迷った原因だったと考える。三ツ峠などのゲレンデでは登ったところを降りるので、下降にこれ程苦労するとは思わなかった。アルパインクライミングでは下降路もよく調べておくこと、見極めることの大切さを感じた。
15:00熊の岩BC到着。無線は源次郎尾根に阻まれて交信できず。気温の上昇で雪渓が溶けたため、平らな雪渓を求めて引越(1回目)。ラジオの予報では13日の天気は良くないとのこと。明日のチンネ左稜線に備えて就寝。
【3日目】
8月13日(月)雨のち雷雨
2:30起床~3:40出発するも天候不良のためBCに戻る~7:00Aフェース取り付き(雨のため偵察のみ)~8:00BC 停滞
準備を整え出発するも、八ツ峰Ⅵ峰も濃いガスで下部しか見えない。長次郎谷も熊の岩から上はガスに包まれている。しばらく様子を見るためBCに引き返すも天候は回復しない。予定していたチンネ左稜線は、本日は取りやめとなる。Aフェースの魚津高ルートと中大ルートを偵察しBCへ戻る。その後は雪渓のないところへの引越し(2回目)をし、おいしくて冷たいコーヒーゼリーに元気を取り戻す。地面が土になり暖かく休めた。18:00雨が降り出し、次第に強まる。19:00稲妻が光りだし、大きな雷鳴が続いた。

Aフェースの取りつき偵察中
【4日目】
8月14日(火) 雨のち晴れ
2:00起床~10:00Cフェース取りつき偵察~12:00熊の岩BC出発~12:35長次郎の出合~15:00剱沢
テントの外はドシャ降りの雨。計画していたチンネ左稜線、剱尾根上部ともに断念。本日も停滞となる。天候が回復したらAフェース、11:00までに回復しなかったら剱沢の縦走隊のもとに向かうことにする。回復は見込めないため、Cフェースの取りつきを偵察に行く。剣稜会ルート1ピッチ目の下部は雪渓に隠れている。取りつく場合ルートまで右上していく必要があると思われた。RCCルートは雪渓の柱がそびえ確認できなかった。今日はメロンゼリーを食べて元気を取り戻す。

停滞の楽しみメロンゼリー!
天候回復しないためパッキングし12:00熊の岩出発。長次郎谷を下りきったころには天気回復しはじめ、気温も上がってきた。

長次郎谷を下る
剱沢雪渓を登り、剱沢キャンプ場15:00到着。天候不良のため下山していた縦走隊とは合流できなかった。3回目の引越しを終え、夕方には姿を現した剱岳を眺めながらのんびりと過ごす。

夕暮れの剱岳本峰・八ツ峰
【5日目】
8月15日(水)
5:00起床~6:40剱沢出発~9:30室堂~11:00立山駅~富山駅~東京駅
雨の中撤収し、室堂へ。バス電車で立山駅へ。下山の報告の連絡を入れる。温泉と魚の定食で満腹になり、名物ます寿司を買って帰宅した。

感想

昨年の夏合宿も熊の岩をベースに、Cフェース・Aフェースと八つ峰上半部を登った。昨年の合宿中、参加者の話の中でDフェースは難しいだろうと話をしていた。また、周囲からもそう聞かされていた。
1年を経過し、種々経験を重ね練習も積んできたので、難しいと思っていたDフェースであったが、特に難しいところもなく、緊張することもなく安心して心より楽しんで登れた。この安心感は、信頼できる山仲間と一緒だから得られたものであると感じている。中野さん、望永さんに感謝です。ありがとうございました。(長島)
久しぶりに本格的な登攀合宿に参加することができた。
天候に阻まれ思うように登攀ができなかったが、山好きで情熱のある仲間と過ごす時間はとても楽しく充実したものである。特にモッチーについては、谷川で最初に会ったイメージは、縦走やハイキングを楽しむ今どきの山ガールであった。それが、春合宿の鹿島槍東尾根、雨で登れなかったが穂高奥又の四峰正面壁、今回の八峰Dフェースと気が付けば、クライマーの仲間入りをしているのには驚いた。
長島さんにしても、百名山を目指すピークハンターだと思っていたが、完全にクライマーに変貌していた。会の力ってすげーなーと思った。自分も負けずにトレーニングしなければ。(中野)
これまでは雨続きでしたが、やっと夏の本チャンに挑戦できました。ちゃんと登れるのか自信もなく不安と緊張の挑戦でしたが、長島さん中野さんのおかげで何とか無事登ることができました。ものすごい経験ができたのも、お二人をはじめ、アドバイスしてくださった先輩方、練習に付き合ってくれた仲間のおかげです。心から感謝の気持ちでいっぱいです。
剱沢から見た夕暮れの剱岳は本当にきれいでした。停滞続きでモヤモヤしていましたが、山から「また登りにおいで!」と言ってもらえたような気がしました。今回の経験を忘れずに、もっと練習を積んでまた挑戦していきたいです。(望永)

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