日程:
2024年11月22日(金)~11月23日(土)
メンバー:
MO(L)、JO
行程
静岡のオクシズにある東河内源流の山を歩いてきた。井川ダムと畑薙ダムの間にあって、北岳に通じる白峰南嶺の南部にある青薙山からつながる尾根というとわかるだろうか。
「静岡の山 日帰りコース158」の著書である永野敏夫氏は『登山の空白地東河内源流の原始性に富んだ山域。ルートファインディングの難しい冒険性の高い最熟達者コースで、決して安直に入ってはならない』と書いている。この稜線は登山道がない。山梨や静岡の山の計画を考えていた時に目に留まり、行ってみることとなった。
11月21日(木)
川崎を出発し新静岡ICへ。井川を目指すが、夜間通行止めのため富士見峠で仮眠。広い駐車場でトイレも新しくなった。2年前に大無間山に登った時は県道189号三ツ峰落合線が通行止めで口坂本温泉を経由しての移動で苦労した。井川への道路は「しずみちinfo」を見るだけでなく、役所に問い合わせをした方がよい。道路には鹿やタヌキがウジャウジャいる。
【1日目】11月22日(金) 8:15東河内温泉-10:00押出沢出合-10:30日影沢落合から右岸尾根への取り付き-12:00天狗の相撲場-14:00小笹平-15:15青薙山手前の崩落地-16:00小笹平
早朝4時ごろから189号の通行止めは解除されるという情報を得たが、予定通り6時に富士見峠を出発した。井川のまちを抜け、井川ビジターセンターを通過し、てしゃまんくの里で準備をしてから東河内へ入る。筑波大学演習林になっている。ゲートが開いていたのでそのまま進んでしまったが、途中で進みすぎたことに気が付き戻る。戻る途中、仕事に向かう人たちとすれ違った。一般車は入れないことを教えてもらう。東河内温泉の下の路肩に車を置く。そこから登山開始。演習林宿舎を通過し、対岸に渡りヨモギ沢の先の工事現場に着くと作業道は終わり。押出沢から沢をへつっていく。灰色の泥岩が滑るので、へつりに自信がない私は、飛び石徒渉をしながら進む。ボッチ沢や日影沢の大滝を通過し、尾根に取り付く。テープなどはないが踏まれている尾根を登っていく。大きなガレの東側の天狗の相撲場にて休憩する。明るく広い良い感じの場所である。そこからは1700mの等高線に沿って長いトラバースとなる。ガレは大きな岩はないものの、ザーッと沢の方まで砂利が広がっている。トラバースはよくはないが踏まれているような感じだった。永野氏の本には「ケモノたちの幹線道」と書いてある。なるほど、そんな感じもする。ローカットの登山靴だったので、足首が外反するのが辛い。枝沢を渡る。GPSで位置を確認しながら進むと東河内の源流にでる。とても美しい。
光がよく入る明るい林に小さな笹が広がっている。沢の源頭でたっぷり水を汲み、広い笹原に入る。静かで温かい。けもの道が縦横無人に通っている。小笹平に到着する。テントをデポし、青薙山の崩壊地を見に行くことにした。青薙山に続く稜線を登っていく。明瞭ではないが踏み跡を進む。青薙山手前の崩壊地は、大規模に崩壊している。ざれてやせた尾根にロープがぶら下がっている。ロープにたどり着くまでに土埃が立ちそうなざれたリッジの通過も必要で、行くも戻るも相当大変なことだと思った。今回は見るだけとして引き返すこととした。小笹平へは来た道を戻るだけと思っていたら、支尾根に入ってしまう。途中でJOが気が付き元のルートに復帰する。下山中、木に大きな爪痕を見つける。熊だろうか…静かに通過する。小笹平に戻りテントを張る。夕食は「黒はんぺん」「おでんの粉」が入っていない物足りない静岡おでんになってしまった。夜は冷えた。雪なのか風花(積もった雪が風に吹かれて飛んでくる雪)なのかわからないがちらついていた。
【2日目】11月23日(土) 8:00小笹平-8:30イタドリ山-9:40青笹山-11:15三ノ沢山11:50水無峠山-12:55鹿の子池-15:10東河内温泉
6時起床。10時間寝た。山梨側は雲海の上に真っ白な富士山が見えた。
出発準備は出来ていたが、日が当たるのを待ちテントを少し干してから撤収した。久しぶりに時間に余裕のある山行だ。
獣道は尾根上を通らず稜線の少し下をトラバースしている。そのトラバース道を歩いていたが笹が朝露で滑りやすいので尾根へ逃げる。稜線上の水溜まりには氷が張っている。この稜線上にはいくつかこのような水溜まりがあり、書籍の記録によるとヌタ場と記されていたりする。また、稜線は多重山稜になっている区間が多く、その尾根間や尾根の少し下が平坦地になっている箇所が多くあった。
イタドリ山でMOが地形図とコンパスを取り出す。スマホの地図アプリで現在地特定やルート登録してあれば進むべき方向も確認できる時代であるが、方向感覚とか地形把握能力とかの退化を防ぐために古代の道具で自分を鍛えておく必要があると思う。
青笹山を過ぎて崩壊地形の脇まで来ると突然視界が開けた。南アルプスの聖岳から茶臼岳方面、大無間(だいむげん)山から大根沢山、反対側は富士山が望める。その手前の身延山には岩崎さんがいるはずだ。テント張るには最高ではないかと思うが水場が無いのと足の踏み場のないくらい鹿の糞が落ちているのが少々気になる。
地形図上は素直な尾根だが、そこからは読み取れない地形の中を進む。面白い。
たおやかな山頂である三ノ沢山や水無峠山には複数のピーク標識がある。三ツ沢山で2人組とすれ違う。まさか人に会うとは思わなかったが相手に驚いた様子はない。幕営装備を担いでおり山伏(やんぶし)から来て青笹山を目指すという。鹿の糞の上で寝るのだろうか。水無峠山でチリリンと音を鳴らしながら歩く2人組が通り過ぎて行った。誰とも会わないと思っていたので人間4人の目撃は少々驚きだった。
さて下りだ。地形図を見るとかなり広い尾根で両側から枝沢が食い込んでおり、素直に降りられそうもない。事前に参考にしたガイドブックには深い笹とあるが、実際はかなり背の低い笹だ。気候か鹿の影響だろうか。事前に地形図から想像していた地形と目の前の景色が違うことに自身の未熟さを感じながら下る。
途中左手に植林帯が現れ始める。幹の下部には青色テープが巻いてあり里山の雰囲気が出てきた。このエリアは登山道はないが手付かずの自然ということではなく、古いワイヤーや酒瓶?、罠の跡などがあり人の生活が感じられる。
植林帯との境が歩きやすいだろうと考えて下っていると明瞭な作業道が現れた。ここから昨日の朝通った東河内(ひがしごうち)の林道までずっと作業道は続いていた。事前に見ていた他の人の記録が何故こんな不自然なルート取りだろうと気になっていた点は作業道を辿っていたということで解決した。
少し歩いて駐車場所まで戻ってきた。昨日開いていた林道ゲートは施錠されていた。開いているからと昨日侵入していたら大変なことになっていた。
さて、まだ明るいし白樺荘でご飯を食べて風呂に入っていこうと向かうと15時半ラストオーダーでギリギリアウトだった。朝の余裕のある行動開始が仇となった。周辺にはここ1件しか店がないので2時間かけて静岡の街まで下りないと食事できないということだ。MOが念のためにカップラーメンも用意していたが、それよりも街に下りましょうということになり、また長いドライブで静岡に戻った。
参考文献:静岡の山 日帰りコース158 永野敏夫
南アルプス 大いなる山静かなる山知られざるルー120選 永野敏夫永野正子
【所感】
2000m程度の山々の連なる南アルプス南部、静岡出身としてはとても興味あるが、夏暑く、アプローチ悪く、獣やヒルなどの生息地でもあり、なかなか足が向かなかったが、歩いてみて11月がベストシーズンなのではないかと思った。2年前の11月の大無間山に続いて静岡の山シリーズ第2弾だったということにしておこう。来年第3弾を計画するので興味ある人はご参加ください。歓迎します。(JO)
今回のルートは登山道はないものの、動物たちの気配や、むかしむかしに人々が歩いた痕跡が、不思議な安心感を与えてくれた。このエリアを歩くには秋と雪の間のこの時期がぴったりだとも思った。安部奥や深南部には、まだまだ歩いてみたい山々が連なっている。山と山を少しずつ繋げていくような山行ができたら、きっと楽しいと思う。(MO)