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登攀技術

この資料は、2011年夏アルパインクライミングを目指すにあたっての手順や注意をまとめたものです。基本的なクライミング技術や必要な装備は理解している前提で書いています。 書かれている内容は“私はこうしている”というものですので、各自で他の方のやり方を取り入れてもらって構いません。

1.はじめに

アルパインクライミング=山岳登攀のことを指し、「本チャン」とも言います。 (以降、本チャンと呼びます) 本チャンは自然の中でのクライミングを楽しめ、岩場単体のみでなくアプローチ含めた山全体としての楽しみを見出せると、最高に充実する山行となります。“山”の要素が多く、自然相手ゆえのリクスもあります。

2.服装

長袖、長ズボンが基本。肌の露出は少なくする。
状況により半袖でも可だが、長袖、カッパをザックからすぐ取り出せるようにしておく。
※雲がわくと寒くなる。登攀中は待っている時間(ビレイ)が長く、さほど汗はかかない。

3.持ち物

(1)ザック

1日でベースに帰ってくる場合、20L程度のサブザックで背当てのないものが、コンパクトに収納できて良い。登攀具のほか、カッパ(雨具)、水、食料、非常セット(後述参照)、防寒具を持っていく。

(2)ビレイ・確保器具 (リード・フォロー)

  • 長め(120cm)1〜2セット、標準(60cm)5〜6セットは用意する。スリング、カラビナの数はパーティとして必要数を計算し、スリング、カラビナをリードに渡す。但し、少なくとも2セットは脱出用に自分で持っておく。
  • リードはランニング10セット程度あればよし。
  • 安全環付カラビナは最低2枚持参し、リードには渡さない。
スリング類 確保器具
スリング類 確保器具

※ヌンチャク(クイックドロー)は数本あると核心部で素早くセットでき役立つ
※自作スリングはプルージックでの効きが抜群。懸垂下降での捨て縄としても重宝する。
※グローブは軍手で代用可(軍手は防寒用にも使える)。

(3)支点のセット (リード)

  • ルート上に確実な支点があるとは限らない。ルートを間違うこともある。その時のために支点(プロテクション)を持参する。 (リードのみ または リードとラストのみで良い)
ハンマーを使うプロテクション ハンマーを使わないプロテクション
ハンマーを使うプロテクション ハンマーを使わないプロテクション

※ジャンピング、リングボルトは非常時(敗退時)の懸垂下降用
ハーケンは中間支点、確保支店で使う(リードが打ったら、ラストが回収する)
※現代は本チャンでもナチュラルプロテクションを使用していると聞く。ハンマーは不要なのか? ・・・敗退時にカムで懸垂する勇気があるか? そう考えるとジャンピング、ハーケンも必要?。

(4)人工登攀、非常時の備え

  • アブミは人工ルート以外でも1式持参する。フリーでは超えない所も出てくるし、ホールドが崩壊していることもある。フリーの補助であれば市販のテープアブミでも可。(フィフィ付けたスリングがあると便利)
  • ツエルトはパーティとして必要。全員は入れるサイズを。
スリング類 確保器具
スリング類 確保器具

※ヘッドランプ、非常セット(非常食、非常燃料(メタ)、ライター、予備電池)は必ず持参。
その日のうちに帰幕できないこともある。
※ホイッスル、ナイフも忘れずに

4.ロープの結び方

最低以下の4種類を覚える。

  名称 場面
1 エイトノット(8の字結び) メインロープをハーネスへセットする
2 クローブヒッチ(インクノット) メインロープでセルフビレイを取る
3 プルージック 墜落時等の脱出。
フィックスロープでのミッテルの登下降
4 フィッシャーマンズノット 懸垂下降時のロープ連結

川崎山岳会のHPの「ロープの結び方」を参照 トップページ→山の知識→ロープの結び方

5.登攀の手順

(1)アプローチ

アルプス級では取り付きまでの道のりが長く、剱・穂高の場合は取り付きまでに必ず雪渓がある。夏でもピッケル、アイゼンが必要。 谷川岳一ノ倉では9月以降はシュルンド(雪渓の割れ目)が開きスリップはNG。

(2)パーティ編成

人数によってオーダーが異なるパーティ編成

※3人の場合は、セカンドとラストは数メートル間隔をあけて同時に行動する。
※4人の場合は、セカンドとサードは数メートル間隔をあけて同時に行動する。セカンドとサードがピッチ終了点到着後に、リードとラストが同時に行動する。
※本チャンは時間勝負なのでフォロー(セカンド、ラスト)はスピード上げて登る
難しくてもスリングやロープを掴んででも登ること。
※セカンド以降は、自分のロープのランニングを回収する。ピッチ終了点でリードへ渡す。

(3)登攀中の行動・コール

リードとビレイヤーとの意思疎通が大事。 コールは簡潔に大きな声でする。

@.取り付き到着〜登攀開始まで

状況 リード 方向 フォロー 備考
取り付き到着 支点セット、メインロープをハーネスにセット、セルフビレイセット
※全員が同じ支点からセルフビレイを取る。必ずメインロープで取る
リード登攀開始 いきます どうぞ フォローは確保を開始する

A.リード登攀中

状況 リード 方向 フォロー 備考
ロープ残量をリードに知らせる あと20 フォローは以下の残量を知らせる
20、10、5、3、2、1、いっぱい
(リード)ロープを緩めてほしい 緩めて フォローはロープを50cm程度繰り出す
(リード)ロープを張ってほしい 張って フォローはロープを張る

B.リード ピッチ終了点到着

状況 リード 方向 フォロー 備考
(リード)確保支点到着 リードは支点セット、セルフビレイセット
解除 フォローはこの合図を聞いたら確保を解除してよい
フォローへの確保準備完了 いいよ
(登って来い)
フォローはこの合図を聞いたらセルフビレイを外してよい
フォロー登攀開始 いきます フォローが出発することをリードに伝える

C.フォロー登攀中

状況 リード 方向 フォロー 備考
(フォロー)ロープを緩めてほしい 赤(*)、緩めて
(赤ダウン)
リードはロープを50cm程度繰り出す
(フォロー)ロープを張ってほしい 赤(*)、張って
(赤アップ)
リードはロープを張る
*自分のロープの色を伝える ロープがたるんだら、そのままにせず、都度アップしてもらう

D.フォロー ピッチ終了点到着

状況 リード 方向 フォロー 備考
(フォロー)確保支点到着 セルフビレイセット

ホイッスル

コールが届かない場合に使う。自分は行動を起こす場合、相手に行動を起こしてほしい場合に使う。

意味 ケース
長音(ピーーーーー) 肯定 (1)(自分がフォロー)ビレイ解除後、リードからピーとサインがあった →リードからの登って来いとの合図
短音(ピッ ピッ ピッ) 否定 (1)リードしていてビレイヤーからピッピッピッとサインがあった→下で何らかのハプニング発生 (ロープがからまり、送り出せない可能性があるので、その場でとどまる)

川崎山岳会のコール

川崎山岳会のコールは「やっこ」。行動中に呼びかける場合はこれを使う。

(4)懸垂下降

ルート終了点から懸垂する場合、2本のロープをダブルフィッシャーマンズノットで連結して懸垂下降する。 下降する前と後の方が忙しい。

(1)必要なもの

下降器(8環、ATC)、グローブ(革、軍手)、安全環付カラビナ(ハーネスと下降器を連結)、スリング、カラビナ(セルフビレイ用60cmまたは120cm)
※スリングは登り返し用2本確保しておく ※カラビナも最低1枚は予備として誰にも渡さない

(2)懸垂支点の例

整った岩場の下降点では、既に懸垂支点がある場合が多い。

ココにメインロープを通す(結び目のコブは岩側)
※ロープを連結してから通すのではなく、すて縄に通してから連結した方が早い

※スリングで補強する場合は、自作スリングの方がほどいてセットできるので都合が良いが、ソウンスリングで補強する場合はカラビナで連結して捨ててくる。
※懸垂支点は強度が確認できれば立ち木や岩角でも良い。

(3)手順

@.下降点到着〜下降開始まで

状況 説明
下降点到着 (1)支点にスリングでセルフビレイセット
(2)メインロープをはずす
準備 (3)支点の強度確認 (場合によってはボルト・ピトン打足し 捨縄の補強)
(4)捨て縄にロープを通して連結し、末端処理する
(5)下降方向にコール (ザイルダウン、ロープダウン)してロープを投げる (2つの束にして別々に投げる)
(6)引くロープを全員で確認 (コブ側を引く)
※ロープがすり抜けないように、状況によりロープを支点にグロープ ヒッチで一時固定するなど注意する
下降 (7)下降器をロープにセットし、体重をかけてテスト
(8)下降する
※下降器を落とさないように下降器にもセルフを取る
終了点到着 (9)次の下降支点にセルフビレイをセット
(10)ロープから下降器を外す
(11)ロープが引けるか確認する。引き側ロープを1m引いてみる。
(12)上にコールする (いいよ/下りて来い)
※必ずセルフを取っている状態にする
セカンド以降の懸垂 セカンドは(7)以降の手順で下降する。
※セカンド以降は(11)不要
※ラストはロープの絡まりをほぐしながら下降する。
(一方のロープにカラビナを通して確認しながら下降する)

A.全員下降終了点到着〜次下降

状況 説明
ロープ回収・次の支点にセット (13)末端をほどいて、引き側ロープを一気に引く
(14)ロープを次の懸垂支点の捨て縄に通す
※(13)と(14)は同時に行う
(3)以降の手順を繰り返す

5.リスク

本チャンは“山”が舞台です。リスクをあらかじめ意識しておけば回避する知恵も出てきます。
リスクを理解して安全なクライミングを行いましょう。

クライミング自体が危険な行為。その自覚が必要。

墜落

本チャンではリードの墜落は許されない。
支点状況が良くなく、浅打ちや古いハーケン等が多い。ガイド本には“フリーで思い切って行こう”と書かれているものがあるが、見極めは自分で行うこと。 また墜落してケガした場合、下山が困難になる。
※フォローは、比較的墜落リスクが少ないので思い切って良い

落石

先行パーティからの落石に注意。自分も落石を起こさないように足元やロープ操作に注意する。

雪渓

取り付きまでは急傾斜の雪渓を行くことが多い。秋にはシュルンドが開く。基本的なアイゼンワーク必要。

天候の急変

夏の午後は必ずガスがわくと考えた方がよい。長袖、カッパ(雨具)をザックから、すぐ取り出せるようにしてお く。夕立もある。

ルートミス

取り付きを間違える、登攀中の違うルートを登ってしまうことも良くある。
支点が急に少なくなった、ルートが荒れだしたなど注意していれば気付く事が多い。良くルートを見る。事前にルートを良く読んでくる。
もし間違えたら、セルフを取れる支点を確保することが大切。支点は立木や岩角でも可。

降雪

3000Mの稜線は10月には雪が降る。10月3連休は冬装備を考慮する。

その他

  • ルート中、順番待ちで1時間待たされることもある。早立ち(早い出発)が基本。

本チャンは「山の技術」が生きてきます。まず山にたくさん登って基礎を身につけましょう。


以 上

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