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雪崩(Avalanche)の知識

雪崩講習会ではスコップ、プローブ(ゾンデ棒)、アバランチトランシーバー(ビーコン)を駆使し雪崩発生後の捜索を練習することも大切ですが、その雪崩に会わない為の予防やリスクマネージメントも重要です。最近の講習会ではむしろ雪崩に会わないための知識を重要視しています。

 雪崩に会うと60%は雪の圧力により圧死し、30%は外傷やショック死で亡くなり、10%が生還する可能性があります。カナダの雪崩統計では、雪崩に車ごと埋まって生存するには15分以内に救出する必要があると言われており、山では車の中の空間はありませんので10分以内に救出する必要があると言われております。
1m四方の水の重さは1トンです。雪崩は乾雪、湿雪などで分類しますが湿雪で〜800kg、乾雪でも〜600kgの重さがあります。その速度も乾式の雪でも最大時速150km湿式では200kmにもなります。
氷のように重い雪が電車並みの速度でぶつかったら人間なんかひと塊もありません。そして九割のひとが亡くなるのです。

危険な雪崩に会わないためにどうするか?

山に行かなければ雪崩に会わないわけですがそれでは登山はできません。人間の知識と経験と適切な判断で回避することができます。

雪崩はなぜ起きるか?

雪崩発生の要素(原因)には地形、積雪、人の三つがあります。

地形

雪山に入るとき地形によって雪崩安い地形かどうか判断します。谷筋や傾斜のきつい地形では雪崩安いと誰でも思うし、雪崩が発生した痕跡があれば危険と思うでしょう。地形、斜度、風の影響、植生、日射などの視点ももって観測することが大切です。
斜度で判断するのは比較的容易で、
30度以下 比較的雪崩の発生は少ない
35度〜45度 非常に危険
55度以上 発生しにくいが注意が必要。 雪が積もりにくいため

積雪

降雪は雪が降ることを指し、降った雪が積もった状態が積雪です。ふわふわした雪のイメージは降雪で、積雪は固く不安定なものです。
雪は降雪直後から結晶同士が結びつき固まっていきます。(焼結といいます)さらさらした雪も時間が経つにつれ締まってきます。日射により溶解し外気温により凍結します。地表面と外気温の差によって内部に温度差ができ、内部で蒸発した霜が再結晶し層ができます。この層の上にある雪の層が滑り出すと雪崩の発生です。さらさら雪が結晶同士の結合が弱い状態で崩れると点発生、積雪の内部の層を境目に雪崩れると面発生、春先など地表面と積雪の間に水が入り込み、この面を境に滑り出す全層雪崩となります。
降雪の状態、降雪後の雪層の状態を観察し不安定な状況かを判断することが大切で、登山ルートを変えるとか登山そのものを中止するなどを決めます。

人的要因

登山者やスキーヤーがその行動で雪崩を誘発することがあります。微妙なバランスで斜面にある積雪を人が行動し刺激してしまい雪崩となることがあります。昔は自然発生的に雪崩は起きると考えられており、巻き込まると運が悪いと思っておりましたが現在では80%-90%は人的原因で発生すると考えられます。特に人が巻き込まれる雪崩ではスキーヤーやスノーボーダーによるものがほとんどと考えてよいと思います。雪面に強い衝撃を与えるスキーやボードによることが雪崩の原因としてあげられます。しかし山屋が登山靴で雪斜面を蹴りこみ登るとき、その下の積雪の内部に存在する弱層に衝撃が加われば崩れてしまします。登山者は雪面に衝撃を与えることは少ないと思いますが、雪斜面をトラバースし亀裂を与えることもあります。

不安定な積雪に何故なるのか?

 ふわふわさらさらと軽い降雪も降り積もれば雪そのものの重さで押固まり、しまり固くなります。降雪直後の積雪はまだ固まっておらず、弱い結合で不安定な状態です。降雪直後の雪庇などは危険な状態です。
降雪が止み日射が当たると表面が溶け出し、夜になると気温が下がり表面は氷結し層になります。
この層にまた降雪があれば当然不安定で雪崩れる危険が増します。
積雪の地表面と表面では大きな温度差が生じます。雪洞を構築し中に入ると外気温が-20℃でも0℃で暖かく感じます。この温度差によって霜が発生します。雪の結晶が一度溶解し霜となり表面と地表面の間で再結晶します。氷の結晶で雪の結晶とは違い粒状になり粒の層ができます。ざらめ状の粒子の上に板を置いた状態で非常に不安定な状態になり、この層を境に雪崩れることがあります。不安定な層を「弱層」と言います。
冬の間降り積もって押し固められた積雪も春が近づくと風、雨、日射によって溶け出します。溶け出した水や雨は積雪の層の中を流れ、地表面を流れ内部から溶け出します。夏の雪渓を見ると表面は風によってスプーンカットされ、スノーブリッジを形成されています。表面と地表面の両面から溶けていることが分かります。
地表面に水が流れ地表面と積雪の摩擦がなくなれば雪崩れることになります。
このことを理解できれば雪崩の分類が理解できると思います。発生した場所で点発生と面発生があり、どの部分の雪が滑り出したかによって表層と全層に分かれます。また雪崩れた雪が乾雪と湿雪にも分類できます。湿雪は雪の粒のまわりに水分があるものを指しています。
雪崩発生時間は降雪中と降雪直後が多いことは想像できます。

雪の種類

新雪 降雪時の結晶が残っているもの。
しまり雪 丸みを持った氷の粒。粒同士が網の目状につながり丈夫。圧接、焼結
こしまり雪 しまり雪と新雪の中間
ざらめ雪 水を含んで粗大化した雪。
水を含んだ雪が再凍結した状態
こしもざらめ雪 温度勾配の作用でできた雪。
平の面を持つ板状、柱状。
しもざらめ雪 コップ状の粒からなり、大きな温度勾配に雪粒が霜になったもの。
氷板 板状の氷。地表面や雪の層にできる。雪が大量の水分を含み温度が下がり板状に氷結。
表面霜 空気上の水蒸気が表面で凝結。
クラフト 表面近くで薄く固い層。日射でサンクラフト。風でウインドクラフト

*雪洞構築でブロックを切出すがしっかりと固く崩れることがない。これはしまり雪。
* 風の強い稜線で表面が板状に崩れ、体重の軽いひとは潜らないが荷物の重い体重の重い人は潜ることがある。表面がクラフトし内部はしもざらめ雪と思われる。

雪崩の種類

点発生雪崩
面発生雪崩

表層雪崩
全層雪崩

乾雪雪崩
湿雪雪崩
*点発生乾雪表層雪崩、面発生湿雪全層雪崩というふうに組み合わせて表す。

道具

スコップ:
埋没した人を掘り出すスコップは固い雪に刺さるよう金属製が良い。軽量化でプラスチック製は刺さりにくい。てこの応用で力を加えると折れ曲がるスコップではいけない。柄の部分もある程度長さと太さが必要で短い柄は長時間の作業で腰が疲れ、細い柄は力が入らない。「飾りじゃないのよスコップは」人の命がかかっている。

プローブ(ゾンデ棒):
アルミやカーボン製の軽量化されている。長さも2m〜3m程度まであるが3mも埋まった人間を掘り出すのに10分以内ではとても無理で実質遺体捜査に使う道具とおもっている。ビーコンの性能が上がり位置、深さが明示される時代プローブで助かった事例があるか良くわからない。

アバラッシュトランシーバ(ビーコン):
アバラッシュ(雪崩)トランシーバ(送受信機)は457kHzの電波を送信し続け、雪崩に会ったら受信モードに切替え埋没者を探す機器です。昔のアナログ式は受信時アンテナ1本で捜索者が体の向きや位置を動かしながら電波の強い方向から捜索する方式でした。最近は3Dといって3本のアンテナで三方向からの電波を受信しDSP(Digital signal processer:デジタル信号処理)で複数の埋没者を方向、距離、深さを液晶画面に表示してくれます。捜索者はじっとビーコンを動かさず持っているとビーコンが教えてくれます。
ビーコンは電子機器であり電池を使うが何時間もつか事前に調べておかないといざというとき役に立たない。海外製のビーコンでも単4乾電池のものがあるが海外での単4乾電池の購入は難しい。
古いアナログ式のビーコンは周波数のずれなどありおまじない程度の役にしか、役にたたないと思ったほうが良い。

もし雪崩に遭遇したら(捜索方法手順)

もし雪崩に遭遇し救助捜索要請を受けたり、自分のパーティのメンバーが巻き込まれたら、まず捜索自身の身の安全を確保してください。

  1. リーダーを決め全員に周知し、その指示に従わせる。自身作業は行わず捜索隊の安全最優先。
  2. 捜索者のビーコンを受信(捜索)モードに切替させ、正常に動作していることを確認。
    ビーコンによる探査を開始させる。
  3. 発生点から巻き込まれたと思われる消失点を確認し、走路の周辺にザック、カメラなど残留品がないか見極める。走路延長線上に埋没している可能性が高い。残留物の周囲30cm四方をプローブで探査する。
    30cmは人間が横向きになった時の体の幅。
  4. ビーコンで1名を見つけたらプローブで確認し、次の埋没者を探す。他のメンバーはスコップで掘り出し救出する。
  5. 救出したら低体温症にならないように安全な場所に移動させ保温する。外傷を負っている場合、応急処理を行う。
  6. ヘリの要請を行い、ヘリ救出場所まで搬出しヘリを待つ。

まとめ

冬の登山は危険です。危険要因は「低温」と「不安定」です。雪や氷が不安定の原因で、氷は滑りやすく足元が不安定です。雪は足元の地面そのものが不安定で、雪崩は地べたそのもの全体が崩れるのです。
このため知識と経験を駆使し調査し判断し雪崩に遭わないことです。雪崩そうな場所に踏み込まないことです。いくら道具を持っていても雪崩は避けられません。道具は雪崩に遭遇した後に使うものです。道具を持ち他人を助ける前に自分自身の安全を確保することです。自身の安全を確保できた後他人を助けられるかです。捜索に一度でも参加したことがあればわかりますが、相当の体力が必要です。
危険の「香り」を楽しみ、危険の「臭い」がしたら逃げることです。 ご安全に!!

本資料は下越田功氏(岳連遭難対策委員長)からの話をまとめたものです。その内容は日本雪崩ネットワーク(JAN)の講習会でのものです。
 JAN:日本雪崩ネットワーク
 CAA:Canadian Avalanche Association

川崎山岳会2015年2月委員会資料 布田仁

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