鹿島槍ヶ岳天狗尾根 山行報告

2003年4月27日(日)~28日(月)
メンバー:宮脇、佐藤(富)、中野

4月26日(土) 雨のち晴れ

長野県に入る頃から雨は徐々に強くなり、大谷原に着く頃には本降りになっていた。天幕を張るのも面倒なので、そのまま車の中で仮眠することにした。
 5時ごろ目が覚めるも外は相変わらずの雨模様。誰も起きる気配は無く再び寝る。7時過ぎ雨がやみ雲の切れ間が見え始めた。昨日の天気予報でも、今日は高気圧に覆われ天候は回復する見込みだ。しかし、大川沢を覘いてみると沢は濁流と化し時折ゴンゴンと石が転がる音が聞こえる。渡渉は殆ど絶望的である。富さんに用意してもらった「わたーる」(股まで入る厚手のビニール袋でネオプレーンのソックスと併せて北鎌尾根の取り付きまでの渡渉では大活躍した)も出番が無さそうである。それでも朝食を押し込み身支度を整え出発の準備をする。他にも2パーティが出発の準備をしていた。大谷沢右岸の林道を進む。林道が一部露出する程度に雪は解けている。河原が終わり前方に吊橋が見えるところで小休止。宮脇、中野で少し先まで偵察をする。偵察から戻ると5人と3人のパーティが追い着いていた。沢の渡渉は絶望的なので、先週この天狗尾根に取り付いた横浜蝸牛山岳会の山下さんと鈴木さんの報告を基に、吊橋の少し手前から高巻き、天狗尾根取り付き辺りを目指す。5人パーティ、3人パーティがほぼ繋がっての行動となる。途中、尾根上に出たところで再び小休止。またも偵察をする。どうにかアラ沢までは降りられそうだ。急傾斜の雪のついた斜面をブッシュ伝いに下降する。丁度降り立ったところに、今にも崩れそうなスノーブリッジが架かっている。渡渉ができない以上、天狗尾根に取り付くにはこのスノーブリッジを渡る以外選択肢はない。初めに5人パーティが渡り、次に3人パーティ、最後に我々が渡った。結局渡渉無しで取り付くことができた。もし、渡渉に迫られれば余儀なく敗退していたであろう。あらためて横浜蝸牛山岳会の両名には感謝したい。
 取り付き付近には雪は殆ど無くッ急な斜面をブッシュを掴みながら登る。それにしても暑い。とにかく暑い。下界よりも暑い。それもそのはず温度計は25℃を指していた。風は全く無い。慣れない暑さに嫌気がさしてバテ気味になってきた頃、右からの尾根と合流し左に向きを変え傾斜が少し落ちてきた。この辺りから腐った粗目雪が覆い始めた。この先暫くは、どこでも幕営可能な駄々広い尾根が続く。更に右からの尾根と合流し、左に折れなだらかな斜面を辿ると、尾根は急に細くなり一寸した雪壁が現れる。1900mのピーク上のところで行動を打ち切る。富さんの昨夜の雨の中の運転での疲れも考慮して少し早いが行動を切り上げ、明日早く出て挽回することにする。夕食は定番となったキムチ鍋で英気を養う。気温は夜になっても下がらず朝食の鍋の水も凍ることは無かった。
 

4月27日(日)晴れ

 3時起床(正確には3時15分、暖かく寝心地がよく少し寝坊した)。5時出発。3m程の雪の段差を越え、少し行くと直ぐに第一クーロワールが現れた。広い雪壁状で雪も比較的締まっていたので難なく通過できた。少し行くと第二クーロアールが現れるが状態は第一クーロアールとほぼ同じだ。今回は残雪で締まっていて難なく登れたが、冬の降雪直後は雪崩が怖いところだ。更に急な雪稜を天狗の鼻に出る。ここまでくると、鹿島槍、五竜、唐松、白馬の通称「後立縦走路」が眺望できる。標高はキレット小屋と同程度だろうか。北壁に目をやると北方を基点に壁が広がっている。残念ながら雪は全く着いていない。北壁の偵察にカクネ里まで降りる予定だったが雪の状態が良くないため、少しトラバースしたところで引き返す。昨日一緒だった5人組と3人組のパーティは追いついてこない。今日は我々がトップでトレースを着ける。天狗の鼻から小舎岩までは緩やかな雪稜が続き概ねどこにでも幕営可能。少し行くと一寸した岩場に出会う。ここで今回初めてロープを出す。中ほどの凹角状のところが少し嫌らしかった。次のピッチも最初のトラバースがロープが無いと不安なところだ。緩やかな雪稜を辿ると荒沢の頭となり、東尾根と合する。東尾根も大盛況で昨日は二ノ沢の頭には10張り程の天幕が所狭しと並んでいた。ここからは緩やかな雪稜が北峰まで続いている。
 北峰で大休止を取り、記念撮影。風も殆ど無く春山を満喫する。西側に目をやると剱岳が剣沢と三ノ窓従え鎮座している。多少の物足りなさを残したがこんな年もあって良いだろう。南峰でも大休止。冷池方面に目をやると全て夏道が露出してる。アイゼンを外し下るが何となく気が抜けてしまう。惰性に任せ冷池山荘に向かう。小屋でビールを買い込みささやかながら祝杯をあげる。至福の一時だ。16時30分の定時交信で赤岩尾ねパーティと連絡を取る。高千穂平に幕営中で明朝鹿島槍にアタックするとのこと。参加予定だった黒木代表が不幸があり参加できなくなったため、新人のサポートが手薄になったため我々にサポートを求めてきた。快諾し明朝我々と合流することにした。

4月28日(月) 晴れ

 朝5時起床。昨晩は多少冷え込んだようだ。富さんが何度か目を覚ましその度に寒い、寒いと言ってゴソゴソしていた。用意しておいた鍋の水も凍っていた。朝食を終えくつろいでいると赤岩尾根パーティが合流してきた。彼らが登頂するのを待つのも退屈なので我々3人も一緒に同行することにした。天気も良く風も穏やかなのでハイキング気分で登頂を済ませる。新人の重森にとっては感動的だったようだ。赤岩尾根の下部は雪が無く藪漕ぎ等で下降に時間がかかるので高千穂平の先から西沢への下降を検討しているが雪の急斜面を下るのに新人のサポートが必要になるらしい。我々も一緒に下ることにする。赤岩尾根へのトラバースルートは使えるようだ。ただ、宮脇、中野は冬の偵察のためピークから懸垂下降することにする。心配していた高千穂平から西沢への下降も雪が適度に緩んでいて余り時間も掛からず降りることができた。新人の重森も大分雪に慣れて来た様だ。折り始めは口数も少なかったが、西沢に降りつく頃には得意の重森節が炸裂していた。西沢出合に出たところで赤岩尾根パーティはもう一泊するとのことだが、我々は任務も終えたことなので一足お先に失礼することにした。

-以上ー 中野記

4月26日(土) 晴れ

 5:00  雨が降っていたため車中にて待機
 7:00  雨が上がる
 8:10  大谷原 出発
 9:00  吊橋手前の尾根(100m程登る)
       天狗尾根取り付きの対岸に降り荒沢はスノーブリッジを渡り、徒渉なし
10:35  天狗尾根取り付き
15:00  1900m付近にて幕営
4月27日(日)晴れ
 5:00  幕営地
 5:10  第一クーロアール
 5:40  第二クーロアール
 6:20  天狗の鼻
 7:00~7:45  カクネ里をほんの少しのぞく
 9:20  2500m付近の岩場(1ピッチ)
11:30  荒沢の頭(ここから北峰まで水平距離約500m(25分)の緩やかな登り。)
11:55~12:15  鹿島槍ヶ岳北峰
13:00~13:20  南峰
13:50  布引岳  
14:30  冷池山荘
4月28日(月) 晴れ
 *前日のシーバー交信で高千穂平まで上がっている
  赤岩尾根パーティーのサポートをして欲しいとのことで
  冷池山荘で赤岩尾根パーティーを待つ
 6:55  冷池山荘
 8:00  布引岳
 8:55  鹿島槍ヶ岳南峰
10:20~10:45  冷池山荘 
 *宮脇、中野は赤岩尾根の頭より懸垂下降
  (20、40、40mの3ピッチ)
  それ以外のメンバーは夏道のトラバースルートより下降
13:00  高千穂平(ここより西沢を下降)
14:20  西俣出合(赤岩尾根パーティーはここで幕営)
15:10  大谷原  

左:大谷原は桜が満開

下:大川沢の濁流
  ゴンゴンと石が流される音がする。

左:今にも崩れそうな荒沢のスノーブリッジ

下:天狗尾根下部
  雪が少なく時折藪漕ぎとなる。
  とにかく暑い。(気温25℃無風)

標高1800m付近。

この先暫く行くと第一クーロワールが現れる。がデジカメが故障し写真はありません。m(._.)m ゴメンなさい。

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