台湾・玉山3952m 雪山3886m 登山報告

2016年10月19日 川崎山岳会 布田仁

 川崎山岳会の谷輪重之さんと台湾の最高峰玉山と第二高峰雪山に登ったので報告します。個人山行としてツアー会社を通さず、自分たちだけで手配し現地で交渉した。インターネットなどから入手できる情報ではわからないことが多く行ってみて初めて分かり理解した情報が多くあったので、今後これら山に行かれる方のため、詳細を記述する。

山域

台湾・玉山3952m 雪山3886m

日付

2016年10月9日-16日

メンバー

L谷輪、布田

行程

 9日 東京(羽田)-台北(松山)-台北(ホテル泊)
10日 台北‐(台湾新幹線)-高鐵嘉儀-(直通バス)-阿里山(泊)
11日 阿里山-(白タク)-上東埔-排雲登山サービスセンタ-塔塔加警察隊-(シャトルバス)-塔塔加(玉山)登山口-排雲山荘(泊)
12日 排雲山荘-玉山主峰-排雲山荘-塔塔加(玉山)登山口-阿里山-(直通バス)-高鐵嘉儀-台北(ホテル泊)
13日 台北-(ツアーバス)-武陵農場-(園内バス)-雪山登山口-七卡山荘(泊)
14日 七卡山荘-雪山東峰-三六九山荘-雪山-三六九山荘(泊)
15日 三六九山荘-雪山東峰-七卡山荘-雪山登山口-武陵農園-(ツアーバス)-台北(ホテル泊)
16日 台北-東京(成田)-川崎(自宅)

 二つの山は国家公園内にあり、入園、入山許可の二つの許可が必要である。玉山は台湾の最高峰でもあり人気があり4ヶ月前に外国人限定優遇処置枠があり申込み抽選で当選しなければ入山できない。雪山には外国人特別枠がなく台湾人同様一ヶ月前に申し込む必要がある。玉山は「玉山国家公園生態保護区許可証」で雪山は「山地管制区入山許可証」で申請時に全員の氏名、生年月日、パスポート番号、ルート、装備等を記す必要がある。それぞれの山の管理事務所は別の組織であり許可証の書式など統一されていない。申請は日本からインターネットでできるが玉山、雪山ともに一ケ月前にしか当選結果が分からないので航空券の手配など事前予約が難しい。幸い我々は予定日に二山とも許可がおり登ることができた。台湾登山協会が空港で配布している和文パンフレットでは玉山登山にはガイドと通訳の同行が必要と書いてあるが、団体ツアーでない限り必要ないようだ。


玉山では登山口にビジターセンタがあり、許可証の確認と入山料(正しくは排雲山荘清掃費の名目)480元(≒1600円)を支払って、隣にある警察署へ向かい登山許可を受ける。一日の入山者数を制限しており92名しか入山できない。外人枠があり25名が割り当てられる。しかし国民の祝日などでは外人枠がないので注意が必要だ。玉山は通常、登山口から高度差400m距離8.5Kmのところにある排雲山荘に泊まり次の日朝早く登り、山頂で御来光を仰ぎ見るのが一般的のようだ。このためこの排雲山荘での宿泊者数が入山者数となっている。
雪山では武陵農場という広大な国民休暇村の上部に登山管理事務所があり、ここで入山許可証を提示し10分くらいのビデオを見て、登山の注意事項と自然保護の注意事項の説明を受ける。ビデオは日本語で作られていた。この登山口から七卡山荘まで高度差300m距離2km、さらに三六九山荘までは距離5kmを雪山東峰を800mほど登り100mほど下ったところにある。
七卡山荘と三六九山荘は同じような構造で二段ベットが備えられていました。入山許可証にはこのベットの番号が記載されており、山荘での受付はなくそのままベットに入ることになる。台湾流なのか二段ベット上下で奇数、偶数と番号が振られており我々も上下となっていた。男女別にはなっておらず、グループで連番となっている。
玉山の登山道は排雲山荘まできれいに整備されており安全だ。途中にはバイオトイレが2か所設置されており、東屋風の休憩所が2か所ある。危険個所には木道や手摺の付いた橋が架かっており、雨で濡れても滑らないように滑り止めもある。道幅も1mほどあり、整備されており安全だが険しい山の斜面を縫うように登山道があり谷側はスッパリと切れており高度感がある。登山道の周りは大木や笹に覆われており3400m付近になってはじめてハイマツのような低木が出てくる。岩稜帯になるのは3600mくらいからで日本の山の植生とだいぶ様子が違う。富士山では2400m以上で植物が生えていないのを考えると1000mくらい台湾と日本では差があるようだ。緯度のせいですが歩いていても大木がありあまり高度を意識しなかった。
排雲山荘は玄関の入口で靴を脱ぎ区切られた部屋に二段ベットが置かれ十数人が入れる大きさだ。二階の我々の部屋には若い台湾人の5人パーティがおりました。山荘では寝袋の貸出しと夕食、朝食の提供もしてくれます。おそらく、中国語で電話での予約が必要と思われる。我々は寝袋と炊事道具と食料を持参しており酒を飲みながら雨の非常階段の踊り場で夕食し、朝食はココアを飲んだだけで出発した。台湾人のパーティが朝2時には出発すると言っていた様なので我々も1時過ぎに起き出発の準備を整え待機しているが一向にどのパーティも出発しない。待っていても仕方ないので二人で歩き始める。ヘッドランプを頼りにジグザグな登山道歩き約2時間で山頂に着く。途中台湾5人パーティに追い越されたが本日の第二登である。山頂はさすがに風もあり寒い。記念撮影し岩陰で風を避けながら御来光を待つ。日の出の時間が5時45分という。ヘッドライトをつけなくても足元が見えるようになり山頂が混雑してきたので東峰まで行ってみることにした。台湾の国旗を掲げたり御来光に向かいて手をあげ記念撮影をしたり、若い台湾の人は元気が良い。排雲山荘に泊まった登山者のほとんどが上がってきたようだ。混雑を避け我々は下山することにする。暗闇を登ってきたので気づかなかったが結構な岩場で傾斜がきつい。このあと排雲山荘により、置いたままの荷物を回収し昨日登ってきた登山道を下山する。昨日は途中から雨に降られ雨具を着けて歩いたが今日は持ちそうだ。登山口までの途中日本人パーティとすれ違った。3人パーティで先頭は現地ガイドが歩いていた。
登山口から国道の駐車場まではシャトルバスが待っていてくれた。6-7人が乗れるバンで行きも使わせてもらった。100元で1時間アスファルトの道を歩かなくて済むなら安いもんだ。シャトルバスの情報はどこにもなく現地で初めて知った。この1時間は貴重で阿里山から嘉儀までの直通バスが1日3便しかなく間に合うかぎりぎりであるからだ。駐車場で2時に待ち合わせたタクシーを早く着いたので早く来てほしいが中国語も台湾語もわからず英語のわからない運転手と交渉ができない。電話番号を聞いてあるが役に立たない。結局電話し英語のわかる人に代わってくれ何とか1時20分過ぎ来てくれた。これで阿里山まで車で戻り、バスで高鐵嘉儀まで戻り台湾新幹線で台北に戻った。
阿里山から上東埔の登山口までの交通便も情報がなく阿里山でタクシーを利用しようと思っていたがタクシーはなく途方にくれた。結局阿里山の宿泊したホテルのフロントで紹介してもらい予約してもらった。どう見ても現地の白タクシーで正式なタクシーとは思えなかった。この点台湾人登山者は自家用車で登山口まで入り、ツアーに参加の登山者は大型バスで登山口まで入ってくるようだ。我々のような個人の登山者はほとんどいないようだ。レンタカーを借りる手もありそうだが日本人がレンタカーを借りるには国際免許証を持っていても借りられないそうだ。台湾は国際的には中国の一部とみなされており、国交がなく国際免許証を認めていない。公益財団法人交流協会かJAFに日本の運転免許証を持っていき手続きをすると許可証を発行してくれるようだ。この許可証をもってレンタカーを借りなければならない。借りたとしても台北でみた交通混雑や日本と違うマナーなどの運転できる自信はない。細い山道で大型バスを高速で飛ばすし現実解ではない。
玉山のアプローチも現地に行ってみればそうだったと分かるが情報がないのは雪山も同じである。谷輪さんの仕事関係の友人がいろいろ調べてくれ雪山の登山口まで直通のツアーバスを予約してくれた。台湾の太平洋側は山地が多く宜蘭までしか鉄道がなく武陵農園までバスを使うことを当初考えていた。これには時間がかかり朝5時には台北を立たなければならない。ツアーバスは台湾国内のお客が対象のようで英語の予約ができず友人に予約してもらった。玉山から下山した夜ツアーバスの出発場所を確認するがなかなかわからずうろうろした。


台北駅東出口3がツアーの集合場所で7時30分のe-goバスに乗る。ツアー客は10人程度で途中2回トイレ休憩があり4時間で武陵農園に着く。途中雨が降り天候が懸念されたが山を越えて農園に近づくと一気に回復し青空になった。高原の避暑地である武陵農園内を周回するマイクロバスに乗り換え登山口に向かう。周回バスも日に3回しか運転しておらず、これも友人が予約してくれた。登山口から七卡山荘までのんびりと歩き、2時間ほどで山荘に着く。140人も収容できる山荘でしたが結局15-6人が宿泊した。夜遅く入ってくると登山者もおり、登山口まで車で入山していると思われる。七卡山荘まで道も良く夜の入山にも問題ないようだ。
朝4時に歩き始めるが途中から雨が降りはじめ、景色は何も見えない。雪山東峰に着くころ明るくなり、ここから笹薮の登山道を三六九山荘に向かってトラバースしていく。登山道には0.5Kmごと道標があり正確で非常に参考になった。雨の中三六九山荘に着き、大きな荷をデポしザブザックで雪山に向かう。山荘周辺は開けた斜面になっており立ち枯れた白い木が立っている。森林火災の跡のようだ。シラビソなど針葉樹の巨木が立ち並ぶ苔に覆われた林を抜けると大きく開けた、雪山圏谷の末端まで来ると天候が急激に回復し青空が出てくる。周辺には登山者は誰もおらず静かである。どこが雪山山頂かわからず登山道の道標を頼りに山頂まで頑張る。山頂には白い石碑があり雪山主峰とある。二人で記念撮影し、まわりの山々を眺めながらゆっくり下山した。三六九山荘に着きラーメンを食べ祝杯をあげ早めにベットに入った。
翌日、三六九山荘を五時半にでてゆっくり下山し10時には登山口に戻った。そのまま武陵農場に戻りe-goバスで台北に戻った。
玉山は八ヶ岳の美濃口から行者小屋に泊まり文三郎尾根から赤岳を往復するコースと似ている。距離と高度を2倍したイメージが合うと思う。雪山は北沢峠から仙丈ヶ岳を登るコースに似ている。戸台から歩き、北沢峠の小屋に泊まり針葉樹の樹林帯を歩き圏谷(カール)を登って山頂に登るコースと似ていると思った。
今回連続して台湾高峰2座を踏めたが事前の予約や準備によるところが大きい。全て谷輪重之さんが引受けてやってくれ感謝する。台湾人の友人や現地であった人々もみな親切で助かった。ありがとうございました。謝謝!!

参考情報

台湾国立公園入園オンライン申請ホームページ:https://npm.cpami.gov.tw/jp/bed_1.aspx
台湾新幹線インターネット予約:https://irs.thsrc.com.tw/IMINT?locale=ja
阿里山森林鉄道:http://www.railway.gov.tw/Alishan-jp/index.aspx?sn=18097&n=20718

行動時間

10/13 0730 台北駅東門3 e-goバス
10/13 1130 雪覇ビジターセンター →徒歩移動15分
10/13 1330 武陵賓館 連絡バス
10/13 1437 雪山登山口 1448 2200m
10/13 1550 シチカ山荘    2463m
10/14 0250 シチカ山荘 雪山東峰     3201m
10/14 0620 三六九山荘 0655 3100m
10/14 0950 雪山 1030    3886m
10/14 1240 三六九山荘
10/15 0530 三六九山荘
10/15 0830 雪山登山口 1120 連絡バス
10/15 1200 武陵賓館 (昼) 1340→林ももさんの車で移動5分
10/15 1350 第二賓館 1400 e-goバス
10/15 1830 台北駅東門3前
10/15 1850 ホテル

*この山行報告関する問合わせは川崎山岳会問合せ先からお願いします。
http://ksk.noor.jp/contact.html

参考資料[PDF/2.8MB]

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